はじめに
親から実家や土地を相続したものの、「住む予定はない」「遠方で管理しに行けない」「兄弟でどうするか決まっていない」といった理由で、そのままにしているケースは少なくありません。
しかし、相続した不動産の放置には、法律上の義務違反・税負担の増加・権利関係の複雑化など、時間の経過とともに大きくなるリスクがあります。特に近年は、相続登記の義務化や空き家対策の強化など、制度面でも「放置」に対する姿勢が厳しくなっています。この記事では、放置によって生じる主なリスクと、今からできる対策を解説します。
相続不動産を放置する5つのリスク
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となります。この義務は施行日より前に発生した相続にも適用されます。遺産分割がまとまらない場合でも、「相続人申告登記」という簡易な手続きで義務を果たす方法が用意されています。
住宅が建っている土地には、固定資産税を軽減する「住宅用地の特例」が適用されています。しかし、管理されず周囲に悪影響を及ぼすおそれがある空き家として市区町村から「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、改善の勧告を受けると、この特例の対象から外れます。その結果、土地の固定資産税が大幅に上がる可能性があります。2023年12月の法改正で「管理不全空家」の区分が新設され、対象が広がっている点にも注意が必要です。
遺産分割をしないまま時間が経つと、相続人の誰かが亡くなった際にさらに次の相続が発生し、共有者がどんどん増えていきます。共有状態の不動産を売却するには原則として共有者全員の同意が必要なため、面識のない親族が関与するようになると、話し合いそのものが難しくなります。「売りたいときに売れない」状態を避けるためにも、早い段階で方針を決めることが大切です。
人が住まない建物は、換気や通水がされないことで劣化が早く進むと一般に言われています。雨漏り・外壁の剥落・ブロック塀の倒壊などで第三者に損害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を問われることがあります。また、草木の繁茂や害虫の発生、不法侵入・不法投棄など、近隣とのトラブルの原因にもなりかねません。
建物は時間の経過とともに価値が下がる傾向があり、劣化が進むほど売却時の条件は厳しくなります。また、相続した空き家を売却した際に一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「空き家の3,000万円特別控除」には、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するといった期限があります。放置している間に、使えたはずの優遇措置を逃してしまうおそれがあります。
相続不動産の主な選択肢を比較
放置を避けるためには、「どうするか」の方針を決めることが第一歩です。主な選択肢には以下のようなものがあり、それぞれに向き・不向きがあります。
| 選択肢 | 手間 | 維持コスト | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 自分で住む | △ 引越し・修繕 | △ 継続して発生 | 修繕やリフォームが必要な場合がある |
| 賃貸に出す | △ 管理が必要 | ○ 家賃収入で補える | 入居者募集・修繕・管理体制の確保 |
| 仲介で売却 | △ 内覧・片付け | △ 売れるまで発生 | 共有者全員の同意、売却期間が読みにくい |
| 買取で売却 | ◎ 少ない | ◎ 早期に解消 | 価格は市場相場より低めになる傾向 |
| 相続土地国庫帰属制度 | △ 審査・要件あり | ○ 帰属後は不要 | 土地のみ対象、建物は解体が必要、負担金あり |
まず取り組みたいこと
どの選択肢を取るにしても、最初に行うべきことは共通しています。相続人の確定と遺産分割の話し合い、そして相続登記です。そのうえで、物件の現状と市場での評価を把握すると、「住む・貸す・売る」の判断がしやすくなります。
- 相続人が誰かを確認し、遺産分割の方針を話し合う
- 相続を知った日から3年以内に相続登記(または相続人申告登記)を行う
- 定期的な換気・清掃・草木の手入れなど、最低限の管理体制を整える
- 空き家の3,000万円特別控除など、税制優遇の要件と期限を確認する
- 査定を受けて、物件の現在の価値を把握しておく
まとめ
相続した不動産は、「いつか考えよう」と後回しにするほど、登記・税金・権利関係・建物の状態といった面で選択肢が狭まっていきます。すぐに売却を決める必要はありませんが、現状を把握し、方針を決めておくことが、将来の負担を減らすうえで最も重要です。
and Leaps合同会社では、相続した不動産に関するご相談や、マンションの買取を行っています。「何から手をつければいいかわからない」という段階でもお気軽にご相談ください。なお、登記や税務の具体的な手続きについては、司法書士・税理士などの専門家へのご確認をおすすめします。